米国ハイテク投資 01・2007〜(1) Return of The TECH IPO

以下の3種類の資料*に基づき、2007年以降の米国VCによるハイテク投資を展望すると、以下の7点に要約できる。

  • BusinessWeek(01/08/2007)The Return Of High Tech IPO
  • NVCA Prediction For 2007
  • Q3 2006 VC Investment

                   
◆米国のVCは、これから5年から7年という長期を見据えた本来のVC投資のスタンスに戻り、
 比較的長期の良好な環境が期待できる。


◆2001年のバブル破裂以降のIPOの停滞を脱し、2007年からまたハイテク企業のIPO指向が強まる。


◆2007年には60から70のハイテクIPOが期待できる。これは2000年以降最大の数である。


◆その背景には、ハイテク企業のIPOを阻害していた、Sarbanes-Oxley法の一部改訂の検討が
進行している。ただ、2007年に実現するかは不確定である。


◆レーターステージからアーリーステージの方へ投資が向かっている。また初回投資の伸びが著しい。


◆今後の投資分野としては、通信、インターネット、メディア・娯楽、ライフサイエンス、
エネルギーが期待できる。


◆海外投資が増加し、そのうち中国とインドが最も注目されているが、その他のアジア、東欧への
投資も関心が高い。

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1.The Return Of The TECH IPO


BussinesWeek誌の新年号(01/08/2007)によれば、2007年は2000年以来の最多のIPOが期待できるとしている。


バブルのピークであった2000年には、170のハイテク企業がIPOを行って、190億ドルもの資金を集めた。
それ以来IPO市場は6年にわたるスランプに陥り、エクジットの方法はM&Aにとって代わられた。
2006年には、2005年と同数の35のハイテク企業がIPOに成功したのみであった。


しかし最近、金利とインフレーションが落ち着いている環境下で、ハイテク企業の多いNASDAQが活況を
呈しており、状況は好転しつつある。
ボストンにある投資銀行American’s Growth Capitalによれば、2006年には2005年と比較して
31%増の67ハイテク企業が公開準備を行っている。 
この数字に基づき、2007年には60から70のハイテク企業がIPOを行うと見られている。
この2000年IPOの期待数字は、2000年以来の最大のものである。


もう一つのサポート要因は、今春多くのべンチャー企業が、IPOをためらったSarbanes-Oxley法の一部が
緩和される見込みであることである。
特にベンチャー企業にとって過大に資金負担を強いた監査に関する事項が削除される。
この改正によってかなりの数の優れたベンチャー企業が再び公開を目指すことが期待される。


また、シリコンバレーの投資家と関係の深いNancy Pelosiが下院議長に就任したことも、
VCにとって期待できる点である。

2001年のバブルの破裂以降、多くの起業家・投資家が抱いていた幻想―何年もかけて堅実な企業を育て
公開させるよりも、Googleのようなスター企業に手早く買収された方が良いのではないか?―から覚め、
又本来の道を歩む可能性が増加してきた。


注1.Sarbanes-Oxley法の改正の動き
米国ベンチャー・キャピタル・アソシエーション(NVCA)は、問題の多いSarbanes-Oxley法 Section 404の
改正を訴えている。このSection 404は企業に、財務的コントロールを定期的に行い、その結果責任
会計監査者及び経営陣に負わせるもので、この法律が、VCが投資しているような若く成長性のある企業を、
多大な資金負担によりIPOから遠ざけていると主張している。
NVCAは、企業価値が$75M以下の小企業にはこの法律の適用を免除するよう要求している。
この要請を受けて、SECはSarbanes-Oxley法の一部を軽減する方向で検討に入った。
この法律改正が何時行われるかは、2006年末の時点では不明であるが、できるだけ早急に行う意向である。


注2.Nancy Pelosi; 初の女性下院議長就任
サンフランシスコ・クロニクル紙によれば、2007年初のイタリア系、初のカリフォルニア選出、初の女性、
下院議長(大統領、副大統領に次ぐNo.3の位置付け)になる時の人、民主党ナンシー・ペロシは300人以上
いる下院議員のうち10指に入る富豪である。 
その多くは、投資家である夫のポール・ペロシの貢献によると言う。
サンフランシスコ選出のこの下院議員は、シリコンバレーとのつながりも深く、多くの投資家、VCと
つながりがある。2008年には民主党の大統領が選ばれる可能性が高く、ペロシ下院議長と共に、
シリコンバレーにとっては政治的にも追い風が期待できる。


今年から上院・下院とも小企業委員会は民主党が委員長をだす。 
これは起業家にとって順風であると観測されている。